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2020.08.17
アメリカでは発展の沿革上初めのうちはヨーロッパから食品が持ち込まれたので、発酵食品というとヨーグルトとチーズが代表的なもので、これらは普段から食べられているが、それ以外となるとピクルス、サワークラウトくらいで、これらは到底毎日食べられているものとは言えない。この半世紀くらいの間に、東南アジアやその他の国からの移住者が増え、そうした人達によって持ち込まれた発酵食品が注目を浴びている。日本からの味噌や醤油、韓国からのキムチ、インドネシアのテンペ、中央アジアからのコンブーチャ、ケフィアなどがその好例である。アルコール飲料であるビール、ワイン、ウイスキーなども発酵飲料であるが、これらのアルコール飲料はここでは取り上げない。発酵食品が最近もてはやされているのは健康増進効果があると言われているからである。日本では毎日食卓に上るほど食べられているが、この数十年間の間に発酵食品は次第にアメリカでも見直され、生活にも入り込んできている。今回は発酵食品がどのように食べられているかを取り上げてみた。
ヨーグルトでは色々なフルーツを使ってフレーバーをつけ、砂糖で甘味をつけた製品がかつてはほとんどであった。この15年間くらいの間に、プロバイオティックの免疫性や消化機能の果たす健康への効果が指摘されるようになり、市場で販売されるヨーグルトの種類が一挙に増えている。市場には低脂肪、低糖、無糖製品やタンパクをさらに加えた高たんぱくヨーグルト、新しく開発されたプロバイオティックを使った製品など様々なバラエティーが出されている。水分が少ない少し硬めのグリークヨーグルトが出されてヒットし、次第にそのシェアを増やしていき、スーパーマーケットのヨーグルトの棚の半分を占めるくらいまでなった。最近はその伸びは止まっているが多くの種類のグリークヨーグルトが並んでいる。グリークヨーグルトのブランドでは “Chobani”(写真1) がトップで “Oikos” (写真2) が2番目である。
その他、“Sigg's”(写真3) ブランドのアイスランド・ヨーグルト、フレンチ・スタイルのヨーグルト “Qui” (写真4) などが出されている。ヨーグルト・ドリンクも種々のブランド製品がある。ヨーグルトはスーパーマーケットの冷蔵製品の棚の大きな部分を占めており、今ではほぼ全ての世界のヨーグルトが勢ぞろいしているようである。最近日本のヤクルトもアメリカに進出して、現在ではかなりのスーパーマーケットで並べられるようになっている。乳飲料のカテゴリーでは最近植物性の牛乳代替え品が増えているが、これらの植物性ミルク製品を発酵させて製造したヨーグルトの代替え製品も多く出されている。
ケフィアがアメリカに入ってきたのは20年位前であろうか。これは発酵乳飲料で、酵母と真正細菌(ケフィア・グレインと呼ばれる)を牛乳や羊乳に加えて発酵させて作られたもので、コーカサス地方で飲まれていた飲料であるが、ヤクルトよりも少し濃いヨーグルト飲料である。最もよく知られたブランドは “Lifeway” ブランド(写真5) で、この会社が最初にアメリカで販売を始めた。現在では、低脂肪、無脂肪、オーガニック(低脂肪とレギュラー)、フルーツジュース、子供用など種々の製品を出している。ケフィアには糖尿病の人の血糖値を下げたり、女性のコレステロール値を下げたりする効果のあることが一部の研究で確認されている。
チーズ製品はアメリカではナチュラル・チーズが主流で非常に多くの種類がある。アップスケール(高級)のスーパーマーケットではチーズだけの冷蔵庫が設置されており、世界からのチーズが並んでいる(写真6)。さらにヨーグルトの棚のそばには日常食べるあるいは料理に使われるチェダー・チーズ、クリーム・チーズ、パルメサン、モッツァレラチーズなどが多く並んでいる。チーズには脂肪が多く含まれている一方でタンパク質、カルシウムも多く、骨を強くする健康的な食品として考えられている。
コンブーチャはいわゆる紅茶キノコで、中国で紀元前に飲まれていたものが、インドやロシアに広がったもので、日本でも一時流行った時がある。これは、イーストと酢酸菌などの菌を使って栽培したキノコのような菌体を砂糖入りの紅茶に入れて発酵させたものである。アメリカでは1990年代後半から2000年代始めにかけて自然食品として販売されていたが、その当時はあまり人々の興味を引かなかった。それがこの10年間くらいで飲みやすい飲料製品に進化して、次第に若い人を中心に日常の飲料として飲まれるようになった。コンブーチャのトップ4ブランドは “GTS”, “Brew Dr”, “Rise”, “Kevita”(写真7) で、それぞれ多くのフレーバーで商品を出している。例えば、“Kevita” ブランドでは、“Blackberry Hop”, “Blueberry Basil”, “Citrus”, “Drangonfruit Lemongrass”, “Exotic Greens”, “French Oak Apple”, “Ginger”, “Grapefruit”, “Lavender Melon”, “Pineapple Peach”, “Raspberry Lemon”, “Tart Cherry” の12種類のフレーバーで出している。こうした飲みやすいコンブーチャ製品が販売を拡大している要因である。
ピクルスとしてスーパーマーケットに並んでいるほとんどの製品(写真8) は単にキュウリを塩と酢とスパイスを入れた水で漬けたもので、発酵食品ではない。ピクルスは本来野菜を塩水につけて乳酸菌などで発酵させたもので、キュウリだけでなく色々な野菜をピクルスにすることができる。サワークラウトもヨーロッパから来たピクルスの1種である。どこの店でも瓶詰や袋詰めで売っているがそれほどポピュラーな食品ではない。ピクルスの味は日本の漬物に似ているので、日本の漬物のようにして食べることができる。
最近、アメリカでポピュラーになりつつあるのが韓国のキムチである。キムチそのものは韓国人、日本人、中国人が経営するスーパーマーケットでは手に入るが、普通のスーパーにはあまり置いていない。しかし、辛いキムチの味はアメリカで次第に浸透してきており、キムチ・フレーバーの製品がいくつか出てきている。例えば、トルティーア・チップス製品でキムチ・フレーバーをつけた製品やキムチBBQフレーバーのポークリンド(豚の皮をフライしたスナック)(写真9) が出ている。アメリカではキムチは、そのまま食べるというより、今後もフレーバーとして使われる機会が増えていくであろう。
大豆を発酵させたテンペはインドネシアの食品で、インドネシアの豆腐ともいわれるが納豆菌ではなくテンペ菌(クモノスカビ)を使って固められたもので、食感が肉のようでアメリカでも昔からベジタリアンが食べていた。テンペには、たんぱく質、ビタミンB群、リノール酸、食物繊維、ミネラル、サポニン、イソフラボンなどが豊富に含まれており、栄養価の高い食品である。普通は揚げて食べられることが多い。植物性食品を出すLightlife Foods社は昔からテンペ製品 “Original Tempeh” , “Buffalo Tempeh Strips”, “Smoky Tempeh Strips”, “Three Grain Tempeh”, “Flax Tempeh” などを出しており、数年前にはボウル製品にテンペを使った製品 “Tempeh Bowls” を出したが現在ではもう販売されていないようである(写真10)。

味噌、醤油は日本の会社がアメリカの食品市場に長い時間をかけて定着させた。現在ではほとんどのアメリカ人が醤油を使っていると思われる。筆者が一度Kikkoman USA社で見学した際に聞いた話であるが、ConAgra Foodsなどの大手食品会社が製造する冷凍食品にはもはや欠かせない隠しフレーバーとして使われているという。消費者が使う醤油の量よりは、食品生産やフ―ドサービスでバルクとして使われている量のほうがかなり多いと考えられる。醤油は現在ではほとんどのスーパーマーケットに並んでおり、店の棚には数社のブランドがあり、現在では減塩醤油、溜り醤油、テリヤキソースなど多くの種類の醤油製品が並んでいる。味噌はまだそれほどアメリカの食生活の中には入り込んでいないが、日本食のレストランで味噌汁が定番のようにだされることから、アメリカ人にも味噌スープはかなり浸透してきた。以前、味噌はソイビーンズ・ペーストと呼ばれていたが、今は「MISO」でだれにでも通じる。味噌も普通のスーパーマーケットで並ぶようになりつつある。家庭での使用方法はスープ以外知らない人がまだ多いが、レストランなどでは味噌漬けの魚や、味噌をフレーバーとしてメニューに使っているところが増えてきている。

このようにアメリカでは発酵製品は次第に増えてきており、特に健康志向の製品として注目されている。
©アメリカ食品産業研究会
著者:吉田隆夫プロフィールを見る
吉田 隆夫 (よしだ たかお)
Takao Yoshida
1968
1968 - 1970
1972
1972 - 1974

1974 - 1985
1985 - 1990
1990
1999
2002
2016
大阪大学理学部化学科修士課程卒
マイアミ大学学術研究助手
大阪大学理学部化学科理学博士取得
シラキュース大学化学科学術研究員
*2010年ノーベル化学賞受賞 根岸英一氏「シラキュース大・根岸研究室」で協働
International Flavors & Fragrances 社 主任研究員
Carlin Foods/Bunge Foods 社国際事業部長
JTC インターナショナル創立
アメリカ食品産業研究会設立
e-食安全研究会設立
クリエイティブ食品開発技術者協会設立


インターナショナル食品安全協会会員、アメリカ化学会員、アメリカ食品科学技術者協会会員-プロフェッ
ショナル・フェロー、アメリカ食品産業研究会会長、e-食安全研究会理事長

学術論文:21(化学学術論文)、技術特許:40以上



e食安全研究会 理事長
アメリカ食品研究会 会長
クリエイティブ食品開発技術者協会 専務理事
理学博士
IFT 認証食品科学士

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