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2024.04.10
スーパーマーケットで販売されているヨーグルト、飲むヨーグルト、乳酸菌飲料などは腸の健康に役立つとされており、消費者の多くもそれを信じて消費している。最近販売されているこうした製品の中には特定保健用食品として表示認可されているものや、機能性を表示した機能性食品として販売されているものもあるが、多くの商品は単に含まれている菌(プロバイオティックス)が表示されているだけで、機能性まで表示されている商品は少数派である。多くの人が機能性まではあまり気にせず、一般的な健康のために毎日摂取しているようである。ヨーグルトを毎日のように食べているヨーロッパのある地方では、長生きする人が多いということも知られており、ヨーグルトや乳酸菌飲料は健康にいいことが分かっている。そのためにヨーグルトは最近では世界の多くの国々で食べられている食品の一つである。
アメリカやヨーロッパのスーパーの冷蔵棚には、非常に多くのヨーグルトが並んでいる。Statista のデータによると、アメリカのヨーグルト市場は2011年には55億8,000万ドルの規模であったものが、2022年では72億2,000万ドルにまで伸びており、2023年には82億ドルに達したのではないかと推定されている。これは消費者の健康志向、特にヨーグルトの健康への寄与効果が消費者に十分認知されていることが要因である。ヨーロッパでも、Verified Market Research社の報告書では、2022年には$USにして198億3,000万ドルの市場規模であったものが、2030年には264億5,000ドルと年率5.01% の勢いで伸びるものと予想されている。後に述べるようにヨーグルトだけでなく、プロバイオティックスが入ったコンブーチャやサワークラウト、ピクルス、キムチといった発酵製品も需要が伸びており、これらの製品を加えたプロバイオティックス製品の市場は継続的に拡大している。
プロバイオティックス、プレバイオティックスと健康
プロバイオティックスとはどのようなものであろうか。人間の腸内には多くの種類の腸内菌が存在しており、それらの菌は身体に悪い菌とよい菌、さらに何もしない菌が混ざって存在しており、約100兆個の菌が腸内菌叢(腸内フローラ)を作っている。ではよい菌であるプロバイオティックスとはどのようなものであろうか。よい菌としては数百種類の菌類が知られているが、一般的によく知られている菌は乳酸菌とバチルス菌で、これらが大半を占める。さらにそれぞれの菌には多くの菌株が存在する。普段健康な時には腸内菌叢はバランスがとれており、そのバランスが崩れると身体の健康にも影響が出始める。食べる食物によっても腸内菌叢が影響を受けるので、食べ物も気をつけて食べる必要がある。悪い菌が増えると炎症や病気を引き起こすことがあるので、常に良い菌が十分存在するようにしなければならない。下痢をしたり、便秘になったりした時は、腸内の細菌叢のバランスがくずれて、悪い菌が増えている兆候である。例えば、抗生物質を飲むと下痢を起こすことがある。これはよい菌が減り悪い菌が増えるためで、このような時には特に子供では、プロバイオティックスが症状を改善してくれる可能性がある。また、コーエンス病や腫瘍性腸炎などの腸内の炎症を起こす病気でも、ある種のプロバイオティックスが予防や再発を防ぐことが知られている。過敏性腸症候群の人にもプロバイオティックスが症状を緩和することが知られている。プロバイオティックスは最近の研究で、イーストの一種であるカンジダ菌感染症、尿管感染症、ラクトース非耐性、ニキビなどの皮膚炎症、子供の胃、消化器、気管での感染症、アレルギー、気管支炎、関節炎などにもある程度の効果があるとされている。さらに、プロバイオティックスを摂取すると免疫性が高まり、種々の病気を予防する効果が研究で示されている。我々は経験的に腸の調子が悪いと、腸だけでなく他の身体の部分も調子が悪くなることを知っている。腸内菌叢を常に正常に保つことによって身体全体の健康を保つことができる。日本人は発酵食品を多く摂取しているので、普段の食事でもプロバイオティックスを摂取しているが、さらにプロバイオティックス入りの食品や飲料製品を摂取することで、より健康な状態を保つことができる。最近の研究では、こうした病気だけでなく、他の健康問題にも関係することが示されており、腸内菌叢が今まで考えられていた以上に我々の健康に関係していることが示されている。例えば、認知症の人と認知症でない人の腸内細菌に違いが示されており、現在さらに研究が続けられている。製品の紹介でもわかるように脳の機能やスポーツのパーフォーマンス、その他の機能にも関係していることが示されている。プレバイオティックスという言葉がプロバイオティックスと共に使われることがあるが、プレバイオティックスとはアメリカ国立衛生研究所 (NIH) の定義では、「難消化の食物成分で、一つまたは複数の菌の増殖や活動を選択的に増進することによって、ホスト(人間)に利益を与えるものである。」とされている。つまり良い菌の餌で、腸内菌叢のよい菌を増やすものである。プレバイオティックスとしては食物繊維や多糖類が代表的なもので、短鎖、長鎖のβ―フラクタン(フラクトオリゴサッカライドやイヌリン、ラクチュロース、ガラクトオリゴサッカライドなど)がよく知られている。
プロバイオティックス、プレバイオティックスが入った食品、飲料
現在の食品市場にはプロバイオティックス、プレバイオティックスを入れた製品が多く出されている。勿論、一番大きなカテゴリーはヨーグルトとヨーグルト飲料である。さらに最近では、他の製品カテゴリーでもそれらを加えた製品が販売されている。サプリメントとしてプロバイオティックス、プレバイオティックスを含む製品は多く出されている。これらの製品で注目される製品を紹介してみよう。
ヨーグルト、ヨーグルト飲料:ヨーグルトは牛乳に乳酸菌を加えて作られたもので、大昔から食べられている乳製品で、現在では世界のどこでも販売されているので、特に紹介する必要はないが、日本では最近、特定保健食品あるいは機能性食品として表示されているものが増えてきた。例えば、特定保健食品では雪印メグミルクの出した 「恵 ガゼリ菌SR株ヨーグルト」などがある。機能性食品としては、同じ雪印メグミルクが出している 「乳酸菌ヘルベ ヨーグルト」などがある。これには、「目や鼻の不快感を緩和する」という機能性が表示されている。アメリカで販売されているヨーグルト製品やヨーグルト飲料では、消費者がヨーグルトは腸の健康や免疫に良いということをよく知っているので、特に機能性や健康効果を表示した製品は少なく、むしろ最近は低糖、無糖、高タンパクを謳った製品が多く出されている。機能性を表示している数少ない製品の一つに、Danone North America社が胃腸の調子を整えることができると謳い販売している“Activia” という商品名のヨーグルト製品がある。さらにはそのブランドの拡張製品として、多機能性のプロバイオティックヨーグルト・ドリンク “Activia+”(写真1)という商品も販売されている。 この商品はマイナーな胃腸の不快感を少なくすることができ、さらにビタミンC、ビタミンD、亜鉛も加えられていて、免疫性を維持する効果があるとされている。 “Strawberry”, “Peach”, “Raspberry” のフレーバーで出されている。ケフィアは乳酸菌だけでなく、イースト菌や酢酸菌などの菌も用いて牛乳を発酵させたヨーグルト様のドリンクで、もともとは東ヨーロッパやコーカサス地方で作られていたものであるが、最近はかなり知られるようになってきている。Lifeway社はこのケフィア(写真2)を “Traditional”, “Whole Milk”, “Low Fat”, Non-Fat”, “Organic” 等で出している。これらには12種類の乳酸菌、バチルス菌、ストレストコッカス菌、サッカロマイセス菌、ルイコノストック菌を混ぜたものを使っている。これらは1サービング (240ml) にプロテインが8g入っている。
Dairy Farmers of America (DFA)社がGood Culture社と共同開発した “Good Culture Probiotic Milk”(写真3) は、乳製品の栄養的利点と微生物を活性化するプロバイオティックスの利点を組み合わせた、米国市場初の無乳糖で日持ちする乳飲料である。使用されているプロバイオティックスは、バチルス菌(Bacillus coagulans GBI-30、6086)(以下、商標のGaneden B-30を使用)で、牛乳を超高温殺菌(UHT)した後に添加され、12オンス(350 ml)の製品を摂取すると、消化器系と免疫系の健康をサポートすると言われている。この Ganeden B-30 は特許がとられたバチルス菌で高温や酸に安定性があるように作られており、以下のセクションでも多くの製品で使用されている。
プロバイオティックスが入った非乳製品飲料としてはコンブーチャ(紅茶キノコ)がある。アメリカではコンブーチャは飲み物としてかなり前から販売されており、スーパーの店頭には相当数並んでいる。例えば “Health-Ade Pop” ブランドのコンブーチャ(写真4)にはバチルス菌のプロバイオティックスが入っている。最初はガラス瓶に入っていた製品であったが、最近では缶入り、さらにソーダ製品も出している。 ソーダ飲料で変わったものとしては、例えば“De La Calle” ブランドのソーダ(写真5)を挙げることが出来るだろう。この製品はメキシコの昔からある飲み物、テパッチェで、コーンやパイナップルを調理して発酵させたもので、プロバイオティックスが入っている。“Karma Waterブランドは、特許技術と厳選された菌株を用い、冷蔵の必要がない “Karma Probiotic Water”(写真6)を提供して、他のプロバイオティクス入り飲料とは一線を画している。同ブランドのプッシュキャップ技術は、飲む前に、キャップの上部を押し下げると、キャップ内に入っていたビタミンやプロバイオティックスが、ボトル内の水に放出されるようになる仕組みなので、 “Karma Probiotic Water” は、温度管理を気にせずに持ち歩け、18ヶ月間の保存が可能である。
プレバイオティックス・ソーダは最近注目されているもので、“Olipop”, “Poppi”, “Vina” などのブランド(写真7)が、古典的なソーダの味を再現しつつ、従来のソーダよりも砂糖の量が少ないソーダ製品を出している。“Olipop” レモンライム味は、4gの砂糖とカッサバ根の繊維、チコリからのイヌリン、アーティチョークからのイヌリン、ナパールのサボテンの繊維、マシュマロの根、キンセンカの花、葛の根)からなる9gのプレバイオティックス植物繊維を含んでいる。 “Poppi”ソーダはアガベからのイヌリンをプレバイオティックとして加えている。“Vina” ブランドのソーダは、アーティチョークからのイヌリンを用いている。Twinings社は種々のティー製品を出しているが、最近は水で抽出する機能性のティー製品 “Cold Water Infusions Probiotic” (写真8)を出している。5億CFU個の熱に安定性のあるプロバイオティックス、バチルス菌(Ganeden B-30)を入れ、 “Pineapple & Coconut” フレーバーで出している。
スナック製品: 最近、スナック製品にプロバイオティックスを加えた製品が出てきている。例えば、BelliWelli 社は社名をそのままブランドにした、これもバチルス菌(Ganeden B-30)を使ったスナック製品(写真9)を出している。キラキラしたピンク色のパッケージで演出し、特に女性を対象にした腸の健康を保つための商品を提供している。 “BelliWelli” ブランド製品は、過敏性腸症候群向きの低FODMAP(オーストラリアの大学が研究で示した過敏性腸症候群の人が避けるべき食品群)であると謳って販売されており、具体的にはグルテンフリー、ヴィーガンで、腸にダメージを与える糖アルコールを含まず、更にはプロバイオティックスを含んでいる(各スナックバーには5億CFUのプロバイオティックスが含まれている。)。フルーツ製品を出しているMariani社はプルーン製品でプロバイオティックスとプレバイオティックスの入った製品(写真10)を出している。プルーンにはプレバイオティックスが含まれており。これにバチルス菌(Ganeden B-30)を加えて、両方で腸内の良い菌を増やすことができ、毎日1食分を食べると健康な免疫性と腸の調子を維持することができるとしている。 同じようなスナック製品としてThat’s It 社が出している “That’s It Blueberry Fruit Bar” (写真11)は、ブルーベリーとデーツだけから作られたスナック・バー製品で、プロバイオティックス(Ganeden B-30)とプレバイオティックス(フルーツに含まれている食物繊維)が含まれているが、特に健康に関する表示は何もしていない。
サプリメント:サプリメントにはプロバイオティックスやプレバイオティックスを製剤した製品が市場にあふれている。ほとんどの製品は腸の調子を保つためとしている。中にはビタミン類を混ぜた製品もある。ここでは少し変わったサプリメントを紹介しよう。バイオテクの新規企業であるFitbiomics社は “Nella” ブランドで “The Performance Probiotic”(写真12)を出しており、使われているプロバイオティックスはスポーツのパーフォーマンスを上げるとしている。この会社は過去数年、プロバイオティックスと運動のパーフォーマンスの関係を研究しており、エリートスポーツ選手の腸内菌叢から得られたプロバイオティックスをもとにしてこの製品を作っている。乳酸菌のplantarum, rhamnosus, acidophilus菌の3種が混ざったもので、この処方は企業秘密である。スポーツ分野におけるプロバイオティックスの効果研究は最近始まったばかりだが、これは乳酸菌の腸内での代謝が筋肉中の乳酸レベルと関係していることが最近の研究で示されたことが背景事情としてある。
©アメリカ食品産業研究会
著者:吉田隆夫プロフィールを見る
吉田 隆夫 (よしだ たかお)
Takao Yoshida
1968
1968 - 1970
1972
1972 - 1974

1974 - 1985
1985 - 1990
1990
1999
2002
2016
大阪大学理学部化学科修士課程卒
マイアミ大学学術研究助手
大阪大学理学部化学科理学博士取得
シラキュース大学化学科学術研究員
*2010年ノーベル化学賞受賞 根岸英一氏「シラキュース大・根岸研究室」で協働
International Flavors & Fragrances 社 主任研究員
Carlin Foods/Bunge Foods 社国際事業部長
JTC インターナショナル創立
アメリカ食品産業研究会設立
e-食安全研究会設立
クリエイティブ食品開発技術者協会設立


インターナショナル食品安全協会会員、アメリカ化学会員、アメリカ食品科学技術者協会会員-プロフェッ
ショナル・フェロー、アメリカ食品産業研究会会長、e-食安全研究会理事長

学術論文:21(化学学術論文)、技術特許:40以上



e食安全研究会 理事長
アメリカ食品研究会 会長
クリエイティブ食品開発技術者協会 専務理事
理学博士
IFT 認証食品科学士

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